割増賃金率の適用猶予の見直し
中小企業に対しては、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用が猶予されてきましたが、「今後の労働時間法制等の在り方について」では、「中小企業労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第37条第1項ただし書きの規定について、中小企業事業主にも適用することが適当」とされています。
ただし、中小企業の経営環境の現状にも配慮がなされ、改正の施行時期については3年後となる平成31年4月とすることが適当であるとされています。
※労働基準法第37条第1項
「使用者が、第33条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」
年次有給休暇の取得促進
年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者に対しては、その有給休暇の日数のうち年5日について、使用者から時季を指定しなければならなくなるかもしれません。
ただし、労働者が時季をすでに指定している場合や計画的付与がなされた場合等については、それらの日数の合計を年5日から差し引いた日数についてのみ使用者に義務づけられ、それらの日数の合計が年5日以上に達したときは、使用者は時季指定の義務から解放されるものとされています。
また、現実的なところでいえば、使用者に対する年次有給休暇の管理簿の作成が省令において義務づけられるかもしれません。
フレックスタイム制の見直し
清算期間の上限は、現行の1か月から3か月に延長することが適当であるとの報告がなされています。
また、清算期間が1か月を超え3か月以内の場合には、清算期間内の1か月ごとに1週平均50時間(完全週休2日制の場合で1日あたり2時間相当の時間外労働の水準)を超えた労働時間について、当該月における割増賃金の支払い対象とすることが適当であるとしています。
さらに、労働基準監督署への労使協定の届出は不要でしたが、制度の適正な実施を担保する観点から、清算期間が1か月を超え3か月以内の場合に限っては、フレックスタイム制に係る労使協定の届出を要することになりそうです。