「宿直」「日直」についての許可基準については、別ページで述べたとおりですが、特に宿直勤務が行われる機会が多いであろう、社会福祉施設についての取り扱いについてはどう定められているのでしょうか。
許可対象と許可基準
まず、「一般の宿直勤務の場合と同様に、常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみを許可の対象」(昭49.7.26基発387号)とするものとされています。
また、宿直回数の週1回の原則の例外に関しては、「人員等の関係から週一回の原則を確保しがたい事情がある場合に、労働密度が薄く労働者保護に欠けるおそれがないと認められる場合に限り例外を認めうる」(昭49.7.26基監発27号)としています。
さらに、社会福祉施設における宿直勤務については、次に掲げる①~④の条件のすべてを満たす場合に、労働基準法施行規則第23条による許可を与えるよう取り扱うこととされています(昭49.7.26基発387号)。
①通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであること。
②夜間に従事する業務は、前記通達(昭和22年9月13日付け発基第17号)で示されている一般の宿直業務のほかには、少人数の入所児・者に対して行う夜尿起こし、おむつ取替え、検温等の介助作業であって、軽度かつ短時間の作業に限ること。したがって、夜間における児童の生活指導、起床後の着衣指導等通常の労働と同態様の業務は含まれないこと。
③夜間に十分睡眠がとりうること。
④上記以外に、一般の宿直許可の際の条件を満たしていること。
なお、社会福祉施設に保母等が住み込んでいる場合には、単にこれをもって宿直として取り扱う必要はありませんが、これらの者に前記通達で示されている一般の宿直業務及び上記②の業務を命ずる場合には、宿直業務として取り扱うことを要するものとされています。
事例に対する見解など
さらに、上記の行政通達の運用にあたっては、事例等を交えて具体的に留意点等が示されています(昭49.7.26基監発27号)。
1.通達の性格について
社会福祉施設の宿直許可の基準は、施設の特殊性からして特例を認め通達したものであるか。
(見解)
社会福祉施設における宿直許可の取扱いについては、従前示されていた一般の宿直許可基準のみでは明確でないので、その取扱いの細部を明らかにしたものであって特例を認めたものではない。
2.軽度かつ短時間の作業とは
本通達に示された「軽度かつ短時間の作業」とは、どの程度の作業をいうか。
(見解)
「軽度」とは、おむつ取替え、夜尿起こしであっても要介護者を抱きかかえる等身体に負担がかかる場合を含まず、「短時間」とは、通達に示された介助作業が一勤務中に1回ないし2回含まれていることを限度として、1回の所要時間が通常10分程度のものをいうものであること。
3.「事例」
養護老人ホームで所定就業時間(8時から17時)終了後下記のような断続的勤務がある場合、おむつ取替えの時間(20時から21時)と着衣等介助、掃除の時間(6時から8時)は労働時間とし、これらの時間を除く17時から8時までを宿直とすることはできないか。
■事例
17時まで 所定就業時間
17時から19時まで 見廻り(約10分)、宿直室で待機
19時から20時まで 宿直室で待機
20時から21時まで おむつ取替え
21時から6時まで 宿直室で睡眠
6時から8時まで 着衣等解除、掃除
8時から 所定就業時間
(見解)
設問のごとく、常態的に毎晩おむつ取替えが1時間ある場合は、所定就業時間終了後(17時)から宿直とすることは認められない。
宿直は、通常の労働から完全に解放された後のものであり、したがって、この場合は、21時以降6時までが宿直許可の対象とされる。
4.睡眠時間中の介助等の場合について
上記3.の事例の場合、睡眠時間中に老人の急病等のため介助することがあるが、その場合は如何に取り扱うべきか。
(見解)
労働基準法第33条又は労働基準法第36条第1項に基づく時間外労働の手続きを行わなければならず、また、その時間に対応する時間外労働及び深夜業に対する割増賃金を支払わなければならない。
なお、このような介助作業が度々ある場合には、宿直の許可が与えられないこととなるので交替制等の勤務体制が必要となること。